愛知県東浦町の大規模社会調査

愛知県東浦町の社会調査に関心を寄せています。

2024年度より始動した「東浦研究」は、健康長寿を軸とした縦断疫学研究として、愛知県東浦町をフィールドに展開している。
研究主体には国立長寿医療研究センターであり、共同研究機関として学術・行政・企業連携体(HICAS)が参画しており、その方法論・設計の両面において注目すべき点が多い。

なかでも特筆すべきは、自記式調査(郵送質問紙)に加えて、会場調査(身体機能測定・認知評価等)を組み合わせて実施している点である。
この形式は、自己評価データと客観評価データを同一個体レベルで取得できる数少ない大規模地域研究の一つといえる。

東浦研究とは?

この調査は、国立長寿医療研究センターを中心とした複数機関による長期縦断的な疫学研究

→住民の健康、生活状況、地域環境との関係を多面的に明らかにしようとするもの。
 とくに、加齢に伴う心身の衰え(フレイル)の予防や健康寿命の延伸に向けて、実際の地域データをもとにした科学的な知見が得られることが期待されているそうです。

▶ 詳細情報:国立長寿医療研究センター公式リリース(2024年4月15日)



社会調査の構造的進展としての意義


社会調査の古典的手法は、主観的報告に依存しがちであり、それゆえにバイアスや限界も内包している。
東浦研究は、横断的調査ではとらえきれない生活構造や健康状態の変容プロセスに対し、縦断設計と客観測定を組み合わせるという設計によって、因果推論の可能性と内部妥当性を格段に高めている。

データサイエンスとの接続可能性

個人レベルの多次元データ(心理・身体・社会的要因)を整備された倫理的手続きのもと収集可能となっており、応用的分析への展開余地が非常に広いと推測される。

とくに、時系列に沿った構造化データの形成が可能であることから、介入の「文脈効果」や「周縁的要因」の探索にも耐えうる設計となっており、応用疫学・実装科学の観点からも注目度が高いと言える。

私的所感

僕のような立場では、この規模の調査を主導する機会はおそらく一生ないでしょう。
それでも、このように優れた社会調査が、今まさに自分の生活圏で行われていることに、ひとりの研究者として強い関心を感じています。

愛知に来たご縁を大切に、関心を持ち、小さな形でも関われればと思っています。
それもまた、社会調査に携わる者のひとつの役割だと思っています。

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